お寺と霊園の違いは?【比較形式で解説】

お墓のこと

今回の「お墓オンライン」は「お寺と霊園の違い」という切り口で解説します。

皆さまが選ぶべき方向性はどちらなのか、できるだけ分かりやすくまとめています。

さっそく見ていきましょう。

お寺と霊園は運営母体が違う

お寺と霊園は運営母体が違います。母体が異なると経営カラーも異なり、結果、利用料の違いに影響します。

お寺は宗教法人

まず、お寺の運営母体は宗教法人です。

宗教法人には「法人税」がかかりません。

学校や病院と同じように、安定して長く活動できるよう、国策とともに存在しているわけです。

さらに、宗教法人なら経営の自由度が高いため、管理料や檀家料などがお寺によって大きく変わってきます

霊園は公益法人

一方、霊園の運営母体は主に公益法人です。

公益法人も同じく法人税は免除されています。

しかし、多額の納税が免除される代わりに、営利活動には一定の制限がかけられています。

結果、霊園ごとの管理料などはほぼ一律で、大体どの霊園も横並びの価格相場です。


続いては、宗教との関連性について。

お寺と霊園は宗教色が違う

お寺はあくまで仏教の教義に基づく存在。霊園は純粋な墓地そのもの、といった違いがあります。

お寺は仏教施設

お寺には必ず本堂があり、ご本尊(お釈迦様)がまつられています。

つまり、来世の極楽浄土を現世に具体化して、僧侶によって仏教の教えを説く場所がお寺です。

お寺にお墓を持つということは、すなわち戒名を得て、仏門に入ることを意味します。

戒名かいみょうとは、仏門に入った証として授与される名前のことです。詳しくは「戒名の正しい解説」で。

霊園は墓地

一方、霊園は純粋な墓地です。

生まれたと同時に、全員が、いつか必ず必要となるのがお墓。

つまり宗教以前の問題で、誰もが安らかに眠れる場所としてあるのが霊園です。


次は宗派の違いについてです。

お寺と霊園は宗派が違う

お墓選びの課題となることが多いのが、この宗旨・宗派の問題です。

お寺は宗派で分かれる

仏教には宗派があります。

同じお寺でも、宗派が違うお寺にお墓を持つことはできません

この点は、お墓選びの間口を狭める方向に働きます。

霊園には宗派がない

一方、霊園は宗派を問わないことがほとんどです。

宗派どころか、キリスト教徒でもイスラム教徒でも霊園にお墓を建てることができます。


続いて「檀家」のハードルについてです。

お寺と霊園は檀家制度が違う

「お寺と檀家」は双方向の関係。「霊園と権利者」は一方通行の関係と言えます。

お寺は檀家制

お寺にお墓を持つということは、そのお寺の「檀家」になることを意味します。

檀家とは、そのお寺を経済的に支える「家単位の互助会員」のようなイメージです。

それと引き換えに、お寺側は、檀家とその先祖に対して宗派を背負って最大限の供養を施します。

檀家だけにフォーカスした記事も参考してください。「檀家とは?菩提寺との違いは?

霊園は会員制

かたや霊園は、一方通行のサブスクリプションのようなものです。

会費を払えばサービスを利用できるというシステム化された構造。

檀家のような家単位の考え方もなく、あくまで故人の遺骨を納骨できる権利、といった感じです。


両者には、精神的支柱の方向性にも違いが出ます

お寺と霊園は精神の依存先が違う

お寺は「先祖・子孫単位の関係」。霊園は「愛する人との関係」を確認する場所です。

お寺は心のよりどころ

お寺にお墓を持つということは檀家になるということ。

このことは、自分の家族・先祖とそのお寺との関係を、ある種の契約によって明確化することを意味します。

自ずと日常生活でも先代・先々代からの住職との関係も濃くなります。

結果、お寺が人生のより所のような位置付けになります。

霊園は故人が眠るところ

一方、霊園はどこまでいっても墓地そのものです。

したがって、訪問すれば故人に会える、そのこと自体が精神的支柱になる存在といえます。

ご先祖様に感謝の報告を、、、といったようなお参りはあまりありません。

あくまで愛する身近な故人を供養する場所です。


普段はあまり馴染みがない、寄付の習慣にも甲乙が生じます。

お寺と霊園は寄附の習慣が違う

お寺は檀家の経済支援によって支えられるもの。霊園は霊園自身が財政自立して存在するものです。

お寺を経済的に支える

お寺にお墓を持つと、寄附の慣習に馴染む必要があります。

  • 老朽化した本堂の建て替え計画に、檀家として経済的サポートをする。
  • 地震で被災したご本尊(仏像)の修繕費用を檀家としてサポートする。

このような形で、寄附を通した資金援助が檀家の本来的役割なのです。

霊園はあくまで管理料制度

一方、霊園の場合は義務的な寄附の慣習は一切ありません。

例えば、老朽化した施設の建て替えなどは、当然、霊園の責任と義務と言えます。

利用者に管理料以外の負担を求めることはまずありません。


ランニングコストの違いも重要ポイントです。

お寺と霊園は維持費が違う

お寺は自由経済的な価格設定。霊園は共産主義的な価格設定です。

お寺の管理料は割高

寺院墓地の管理料はお寺側の事情で自由に決められます。

そもそもお寺組織は、総本山と呼ばれる頂点のお寺があり、その下に大本山があり、そして本山があり、、、と、宗派ごとにピラミッド型で統括されています。

このような序列制度を背景に、下位の末寺は上位の付属寺院に上納金を納めています。

その影響で、管理料は個々のお寺の状況に応じて設定されている上、それ以外にも護持会費などが加わるケースもあります。

結果、適正価格のお寺もあれば高額なお寺もある、といった形で混在しているわけです。

霊園の管理料は割安

一方、霊園の維持費は割安です。

まず、維持費と言えるものは管理料だけです。

しかもその管理料は、内閣府や都道府県から実質上の公定価格のような縛りを受けています。

結果、利用者としては墓地選択を安心して検討することができます。

お寺と霊園は立地が違う

寺院墓地は身近な存在。霊園はたまに訪問するところ、と表現できます。

お寺は都市部にもある

お寺の立地が良いことは説明するまでもないでしょう。

街中を冷静に見渡すと、身近にあることをあらためて感じられると思います。

霊園はほぼ郊外のみ

一方、霊園は郊外型です。

霊園は、戦前期の開発によってできたもので、歴史的に見ると「最近できたもの」、と言ってもいいくらいです。

開発にあたっては、「墓地」という性質上、住宅や駅周辺など人が行き交う場所を意図的に回避して作られた経緯があります。

結果、霊園は公共交通機関では訪問しづらい場所にあることがほとんどです。

反面、広大な土地、眺めがいい場所、開放的、自然豊か、といったメリットを存分に味わうことができます。

お寺と霊園は施設内設備が違う

お寺はあくまで仏教施設。霊園は遺骨が眠る場所、そしてそれをお参りする施設です。

お寺は仏教施設

お寺は仏教の教えを説く場所です。

そのため、寺院としての設備が第一で、お墓としての設備は2次的です。

霊園は墓参施設

お墓参りをする側の視点に立つと、霊園の設備は充実しています。

  • 快適な休憩所がある
  • お花の販売所がある
  • 法事・会食の施設がある
  • 大型の駐車場がある
  • 石材店の支店がある

といったイメージです。

敷地内設備だけではありません。

  • お墓参りの代行サービスがある
  • お墓掃除の代行サービスがある
  • 駅から無料送迎サービスがある
  • 敷地内も巡回車サービスがある

といったサービスも充実しています。

樹木葬や納骨堂との違いは?

このように、寺院墓地と霊園では、お墓選びの方向性が全く異なります。

今回は、「霊園」と「寺院墓地」の違いを整理してきましたが、次はこれまでとは全く異なる墓地スタイルで視野を広げてみます。

次回の「お墓オンライン」では、もはや墓選びの本流となった、「樹木葬」や「納骨堂」について解説します。

今回の記事のおさらいはこちら。

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