【散骨の費用相場】正しいやり方や手続きなどを中心に解説

お墓のこと散骨

今回の「お墓オンライン」は、散骨について詳しく解説します。

お墓を建てるよりも、コスト面が「圧倒的に安くつく」のが散骨供養のメリットです。

お墓を建てようとすると200万円は覚悟。

しかし散骨なら最安で3万円程度から可能です。

とはいえ、納骨には納骨の法律があるように、散骨にも様々な規制があります。

海洋のイメージ画像
例えば海洋散骨の場合
 
  • やり方を間違えると「遺骨遺棄罪」に該当する
  • 陸地から「1,853m以上離れた海洋」でのみ散骨OK
  • 花びらと一緒に散骨はOK、但し「茎が入るとNG」

さっそく具体的に紹介していきましょう。

散骨の具体例と費用の相場

まずは散骨による供養の具体例とコスト感から紹介します。

海洋散骨

海洋散骨は、チャーターしたクルーズの上から、遺骨を大海原にまいてお別れするスタイルです。

普通のお墓の場合は、ひと気のない墓地で風雨にさらされ続け、いずれは石の寿命が物理的な限界を迎えます。

年に数回、遺族がお参りや管理をしてくれますが、それが何世代先まで続くのかも未知数なのがお墓。

そうではなく、死後は母なる自然と一体化して、残った家族などを大きく見守りたい、といった考え方が海洋散骨です。

海洋散骨は、以下のようにいくつかの方法に分類されます。

海洋散骨は、数ある散骨のスタイルの中でも、今現在最もメジャーな方法です。

遺族の希望というよりも、本人が生前に希望して実施されるケースが多いでしょう。

 

海洋葬で有名なのは「シーセレモニー」です。

プランが豊富で、沖縄やハワイでも散骨可能で注目されています。

 

続いては「里山散骨」を紹介します。

里山散骨

里山散骨は、山に散骨するスタイルです。

樹木葬とイメージが似ていますが、全く異なります。

樹木葬は墓地内に区画を購入して、遺骨を「埋葬」するのが通常です。

樹木葬は、お参りの対象も「あの樹木」と明確です。

一方の里山散骨は「粉骨を撒く」ので、「埋葬」とは異なります。

お墓参りの対象は「あの山」とか「この辺り」といった感じになります。

里山散骨を選択する人の考え方は、先ほどの海洋散骨とほぼ同じでしょう。

死後は母なる自然と一体化して、残った家族などを大きく見守りたい、といった考え方です

費用的にはわずか数万円。

3万円でできるケースもあります。

全てのお墓スタイルの中で最も安い部類と言えます。

指定散骨

指定散骨は、思い出の海や山など、散骨場所を指定するスタイルです。

複数の場所に分散して指定散骨することも可能です。

散骨場所を巡るだけで、思い出旅行として故人を偲ぶことができるスタイル。

儀式重視のお寺の納骨式よりも、現代的なこちらのスタイルを選ぶ方も増えてきています。

海外散骨

海外でも散骨は可能です。

ただし、日本と同じように火葬文化がしっかりと根付いている国に限られます。

仮に、海外に散骨してほしいと遺言に残すなら、あらかじめ希望する国の領事館に詳細を問い合わせて手続きを確認しておけば大丈夫。

例えば、米国での散骨は可能です。

自由を謳歌したい人なら、ハワイの海へ散骨というスタイルも一部の間で人気を博しています。

海外散骨のイメージ画像

宇宙散骨

宇宙散骨は、遺骨を宇宙へ打ち上げる供養スタイル。

海洋散骨や里山散骨は、海や山に向かって手を合わせることができますが、宇宙散骨の場合、遺骨は大気圏で消滅します。

そのため、宇宙散骨は後々手を合わせる対象がなくなってしまいますが、それを承知の上でなら、実現可能な散骨スタイルです。

高額だったのはかつての話で、近年では一回あたり数千人の募集がかかり、30万円ほどから可能です。

小型の人工衛星に、100名ほどの他の遺骨とともにロケットで打ち上げられます。

その後、地球上を数ヶ月や数年かけて周回し、再び地球に再突入する時に大気圏内で消えてなくなります。

打ち上げたロケットの軌跡をアプリで追跡できたりしますので、空を指さしながら、

「おじいちゃん、今あの辺りにいるね」とか

「明日、地球に戻ってくるんだね」

といったお別れの仕方ができます。

以上、まずは主な散骨スタイルから紹介しました。次は散骨の基本をおさえていきましょう。

散骨とは

散骨とは、火葬後の焼骨を、海や山などに撒いて故人を供養する方法。

本来は、遺骨は骨壺とともにお墓の中にありますね。

そして遺族は墓石に手を合わせに行きます。

一方の散骨は、海や山、地球そのものが故人の浄土。

水にかえり、土にかえり、星にかえることができる供養方法です。

散骨と自然のイメージ画像

散骨は自由に行えない

遺骨と法律

自分らしく、自由な発想が実現できるのが散骨の魅力です。

とはいえ、実は自分本位で勝手気ままにできるわけではありません。

そもそも、亡くなった後の遺骨は、法律によって定められた墓地(寺院墓地や霊園など)に納骨するのが大原則です。

これを怠ると、遺骨遺棄罪という刑法上の罪にも抵触することになり得ます。

価値観の多様化

ですが、日本の埋葬文化に対する人々の価値観や考え方は、昭和、平成、令和と時代が進むにつれて明らかに変化しています。

それを受けて、散骨は例外的に次のように位置付けられるようになりました。

「葬送のための祭祀さいしとして節度をもって行われる限り罪に問われない」

つまり、常識的な範囲でなら、散骨は何の問題もないということです。

このことは法務省が公式見解として世に示しています。

粉骨の義務

もう少し細かく見ておきましょう。

散骨が認められる要件の、「葬送のため」や、「節度をもって」という基準の具体例をいくつか紹介します。

粉骨の必要性

例えば、何の前触れもなく人が遺骨を見たとき、それは「白骨」とも言えます。

普通なら大混乱するでしょう。

遺族にとっては葬送の目的は明らかでも、第三者の目には人骨として映るからです。

遺骨を落としたとか、失くしたなど、状況次第では、第三者は事件性ある解釈をしてしまう可能性も否定できません。

粉骨の具体例

そのため、散骨をする場合は「遺骨が遺骨と分からない程度」にまで粉々にする義務が課されています。

具体的には直径2mm程度にまで粉々にすることが求められています。

そのレベルが「葬送のため」や「祭祀として」の 粉骨の義務とされています。

2mmまで粉々にする作業を、仮に一般人が行うと、すり鉢などを使って10時間以上かかる作業になります。専門の業者が、専門の機械を使って、1時間ほどかけてパウダー状にするのが定番です。

散骨場所について

別の例を見てみましょう。

風評への配慮

散骨は、遺族以外の一般の人々に影響を与えてはいけないとされています。

例えば、市民の水源になっているような場所に散骨をした場合や、漁場となっている場所で散骨が行われたことが知れ渡ると、一般の方々の心情にとっては、人骨が撒かれたという理由で大きな悪影響を与えてしまいます。

配慮の具体例

こういった理由から、海洋散骨なら、陸地から1海里以上(1,853m以上)離れた海洋で行うことがルールとなっていたり、船については他の一般客が同乗していない、散骨だけを目的とした船舶でしか行ってはいけない、などとされています。

この辺りは、自治体による条例や規制もあったりなかったりと様々です。散骨希望場所のお役所に問い合わせるか、散骨専門業者にお願いして確認するか、が事前に必要です。

自然環境への配慮

自然環境への配慮が必要なのは言うまでもありません。

金属、プラスチック、ガラスなどを遺骨と一緒に散骨することは禁じられています。

例えば、ラッピングされた花束をそのまま投じることは当然やってはいけないことですし、茎や葉付きの花も、投じると海洋汚染などに影響する、と決められています。

参列者の安全確保義務

海洋散骨の場合なら、船客賠償保険に加入した船舶で出航することが義務付けられています。

また、風速、波高、視認距離などの出航停止基準を厳守すべきというルールもあります。

野放しに散骨を認めてしまうと、仮に1回でも惨事が起こると社会問題化し、結果、多くのことを禁止せざるを得なくなるという日本独特の価値観の背景からこのように定められています。

散骨証明書の交付義務

散骨業者側の義務

散骨は、ともすれば人骨という事件性を帯びた表現に簡単に入れ替わります。

そのため、遺族から、供養のための散骨希望意志をきっちりとした形で受けた上で散骨がなされていることを、散骨業者側は証明する必要性が求められています。

また、散骨した場所を巡る周忌訪問(弔いのクルーズや散策)の必要性もあります。

そのため、散骨した場所の緯度や経度を示した散骨証明書の発行義務も、散骨業者に課されています。

散骨業者の信頼性を見極めるためにも、散骨証明書の発行について事前に問い合わせておくことをおすすめします。

一般市民への配慮義務

例えば海洋散骨の場合、桟橋やマリーナに喪服や遺影、骨壷などを持ち込んだ場合、他のウェディングセレモニー中の客や、レジャー客の心情としてはあまり良いものではありません。

また、時間についても配慮が求められています。

一般の方々が少ない時間帯を散骨の時間とする必要があります。

散骨の手続き・届出

納骨には法的縛りがある

従来型のお墓に納骨する場合は、法律に則って一定の手続きを行わなくてはなりません。

臨終を迎えたら、死亡診断書を医師に作成してもらい、それを持ってお役所に死亡届を提出し、火葬許可証を入手し、国や自治体の認可を受けた墓地にて初めて事が進みます。

手続きのイメージ画像01

そこでは行政手続きとともに、墓埋法ぼまいほうという法律が根拠法として大きな影響を与えています。

散骨には縛りがない?

しかし、火葬後に散骨をする場合、その先の「手続き面については」法的な縛りは、実はありません。

火葬するまでは上記のような手続きが必要です。

火葬後は煩わしい手続がないので、いざ散骨を執り行うときは意外とあっさりと事が進むでしょう。

ただ、注意点は、一度お墓に納骨した遺骨を、例えば後に故人の遺言が見つかって、やっぱり散骨することにしたい、といったパターンです。

この場合は、改装許可証と呼ばれる役所への申請が必要です。

お墓から勝手に遺骨を取り出すことは許されていないからです。

まとめ

さて、以上で散骨についての基本はほぼ網羅できたことになります。

ここで、もし仮に「散骨ありき」で色んな情報を探している人がいれば、是非、その前に、従来型のお墓や霊園、納骨堂などの基本も理解しておくことをおすすめします。

自分や身内が亡くなった後のことは、思っているほど単純ではなく、おさえておきたい判断ポイントがいくつかあるからです。

と言っても難しい話でもなく、知ってるか知ってないか、といったレベル感です。

「知っていればこんな選択はしなかった」と後悔しないためにも、お墓選びの全体像にも触れてこそ、心置きなく散骨を選ぶことができるはずです。

 

小寺
小寺

こちらの記事、霊園職員の小寺が編集しました。

皆さん「樹木葬」が世に現れたのは1999年だとご存知でしょうか。
当初は保守的な声が多く、「墓石がない樹木葬なんて・・」といったネガティブな意見がほとんどでした。
ですがその後、わずか20年足らずで樹木葬は完全に市民権を得、今や人気ランキングで1位になるほどです。
従来型のお墓の歴史が数百年あることを考えると、これは脅威的な勢いです。
同じように「散骨」という選択肢も、今、大いに注目を浴びています。
まだ保守的な声が多いのは事実ですが、それも樹木葬の最初の頃と全く同じ。
自分の死後の時間軸が「永遠である」ことを考えると、いっときの世間体を考えるよりも、定められたルールの中で自分らしさを優先した永眠の方法を考えたいところですね。そんな思いでこのサイトを編集しました。この他にも知識ゼロからでも「ここだけおさえておけばOK」という視点で発信していきますね。